【米国 de minimis 廃止】 eBay輸出セラーが直面する新ルールと市場の行方 2025年8月29日から、米国向け輸出に大きな制度変更が始まりました。 これまで輸入価格が800ドル以下であれば免税となっていた「de minimis(デミニミス)制度」がトランプにより急遽廃止され、低額商品の輸出でも必ず関税が課されることになったのです。 【eBay公式発表:SpeedPAK新ルール】 eBayもこの変更を受けてebay公式配送サービスSpeedPAK利用時のルールを明確化しました。 ・2,500ドル未満の貨物はすべてDDP必須(セラーが関税込みで発送) ・Economy便は1,300ドル未満に制限、DDPのみ利用可能 ・関税処理手数料 2.1%、輸入通関手数料225円がセラー負担 ・申告内容(品名・申告額・数量・重量・原産国)に虚偽や不備があれば遅延や罰金リスク つまり、今後は「安価だから免税」という考えは完全に通用せず、関税前提での価格設計が必須となります。 【市場に広がる混乱と「2:6:2の法則」】 現場のセラー行動を俯瞰すると、典型的な「2:6:2の法則」が見えてきます。 上位2割:すでにDDP/DDUで対応済み。関税分を販売価格に転嫁。 中間6割:制度は知っているが、よく分からない、もしくは判断できずに停滞。 下位2割:何も知らず放置。短期的に安売りで売れるがバイヤー未払いで商品が届かず赤字化のリスクが高い。 一時的には「ノーアクションの特攻セラー」が安く売って市場を荒らします。 彼らが淘汰されるまでは関税未対応のセラーが売れる状況が続き売れにくい状況が続くと予測します。 【高級品と低価格帯で明暗が分かれる】 今回の変更は商品ジャンルによって影響度が大きく異なります。 例えばスイス製の時計は米国関税40%。これは日本人セラーがロレックスを売る場合だけではなく、世界中どの国から輸出しても公平にかかる税率です。ではアメリカ人はロレックスを買わなくなるか? 答えはNOです。一時的には買い控えが起きても、高級品を買う層は値上がり価格に慣れてしまえば消費は戻っていくでしょう。 一方で、低価格帯は深刻です。例えばDAISOのような2〜3USDの商品(中国製)に約30%の関税を転嫁すると3.25〜3.9USDに。 「安いから買う」バイヤー層にとっては心理的負担が大きく、購買意欲が急速に落ちるでしょう。 在庫を積んで薄利多売を狙うビジネスは在庫リスクが高まるので要注意です。 【eBay株価が上がる理由】 皮肉なことに、現場が混乱する中でeBay株価は急上昇しています。 売価が2割上がれば自動的に手数料収入も増えるため、投資家は「むしろプラス」と見ているのです。 さらに米国内のインフレによりバイヤーは値上げを相対的に感じにくい面もあります。 【今後の展望】 中本の見立てでは、9月〜10月は全体的に売れにくい時期になるでしょう。 しかしこの混乱が落ち着いた後はebayが年間で最も売れるホリデーシーズンに突入します。 北米の個人消費が最も活性化する時期です。 「関税込み価格で安定的に売れる市場」に徐々に移行するでしょう。 今後ebayセラーは「在庫リスクを避けつつ、関税込みの価格設計を早めに整える」ことが生き残りの鍵になります。

数年に一度のブラックスワン!
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